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イルカと、海へ還る日(ジャック・マイヨール)

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学生のころ大学に50mプールがあったんですが、競技用の飛び込み台がついていてその下が水深10mほどの深い溝になっていました。ここに潜っていって水底で水の音に耳をすませていると、なんだか自分が溶け込んでしまうような不思議な心地よさが訪れます。この感覚が僕は好きです。泳ぐのが苦手な人も、このただ水中に漂っていることができたらきっともっと水が好きになれると思う。とはいえ僕も潜水夫じゃありませんから、水の中では持って30秒程度しかいられません。水底までたどりつくころには息があがっちゃいますから、底でじっとしていられるのはせいぜい10秒程度。。。この漂う感覚をもっと味わいたくって、学生のときにスクーバダイビングの免許をとりました。そうすればもっと長い時間、この心地よさに浸ってられるんじゃないかと思いました。これでフロリダの海に潜った時には感動したのを覚えています。あたり一面エメラルドの海に、魚の群れが頭上を横切ってくんですが、ほんとに魚も自分も海中を飛んでいるようでした。この沸き起こるような感動は忘れられません。ただ、プールで感じた静かで研ぎ澄まされたような感覚を味わうことはできませんでした。スクーバって結構せわしないんです。こういう静かな感動を味わうにはやっぱりボンベとか機械に頼っちゃダメなんですかね。。

イルカと、海へ還る日なんで、こんな話を始めたかというと、つい先日「イルカと海へ還る日」という本を見つけたんです。映画「グランブルー」のモデルになった著書です。はい。映画の主人公ジャック・マイヨールは実在の人物です。このグランブルーってのがいい映画なんですけど、その話はおいといて。この本のなかでは、ジャック・マイヨール自身の潜水体験や、水中に生活するイルカなどの動物との出会いと別れが感動的に綴られていきます。動物と人間が同じ目線で共生することで、特にクラウンと名づけられたイルカから多くのことを学んでいきます。これ読んじゃうと、もうイルカは友達ですよ!また、自然に対する考察も深くなります。水中の中で呼吸をいかに停止するかを追及することは、逆に普段の呼吸がどれだけ大切な生命活動であるかを学ぶ事につながります。空気の重大さを学ぶことになります。我々は多くの活力を大気中から吸引しています。仮に機械的に酸素だけを生成した人口空気を吸引すると体調がすこぶる乱れるのだそうです。実際に宇宙飛行士が船内で吸っている空気には酸素の他にイオン生成機などが取り付けられているんだって!へぇ~。酸素やイオンだけでなく呼吸により動物は様々な活力を吸引している。このあまりにも重要な事実に我々は無知すぎる。そして毎日何気なくエアコンや排ガスの中"死んだ空気"を吸引しているんです。この自然の営みを理解し互いに共存し住みよく活力に満ちた環境を目指していかないといけないんですね。

また、彼は人類史上始めて水深100mの深海に素潜りでの潜水に成功した人(当時は生理学的に人間が素潜りできるのは40mが限界とされていたことを考えるといかに偉業を成したかが分かります)。その潜水時間は3分半を超えます。彼がこの3分の間に感じる世界観―――海や地球の意識と一体となる感覚―――が感性豊かに語られます。海に潜ることで得られる言いようのない神秘体験の片鱗を読者に味合わせてくれます。海や地球に生かされている僕らの存在を深く考えさせられる1冊。。。

深海の、果てしなく青一色の世界の静寂に包まれてただ一人となるとき、時間と空間と光はひとつのものとなり、私は私の呼吸を一時止めて宇宙の呼吸に身を委ねる。その時私は両棲人間という私の真の本性と再会し、ひとつの“宇宙の歯車”に再び還っている自分を再発見する。

皆さんが私に続いてくれますように・・・
ジャック・マイヨール
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Category: | Date:2006/08/30


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