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ノーベル平和賞で世の中がわかる(池上彰)

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19世紀スウェーデン、アルフレッド・ノーベルが発明したダイナマイトにより土木工事が迅速に、そして何より安全に行われるようになった。その一方でダイナマイトは図らずも殺戮兵器として使われることにもなる。そのことを深く悲しみ、彼の莫大な資産を使って”人類のためにもっとも貢献をした人に賞を与える”よう始まったのがノーベル賞です。このうち”国家間の友好と軍隊の廃止ないし削減と平和会議の開催ないし推進の為にもっとも尽くした人”に与えられるのが平和賞。ノーベル賞は毎年スウェーデンで選考されますが、この平和賞だけはノルウェーにて選考されてるんですって!当時ノーベルはノルウェー議会の平和的解決を模索する調停能力を高く評価していたようです。選定メンバーはノルウェーの国会が任命しているようですが、今ではメンバーを国の機関から独立させるため、現職の議員など選ばれません。この平和賞の歴史をたどることで、人類が歩んできた平和への歩みがみえてきます。


ノーベル平和賞で世の中がわかる(池上彰)

未だに続く暗い世界と立ち向かう勇気

平和賞の歴史や受賞者の背景を学んでいると、まだまだ世界には問題がいっぱいあふれていて、こういう賞を受賞できるいわゆる知識レベルの高い文化人でさえ、つい最近でも不当な人権侵害や軟禁、拷問の経験があり、そういう世界に生きている人がまだまだいるんだということにショックを受けた。金大中氏はこの日本で1973年に韓国の工作員により拉致され、暗殺される直前で助かっていたり、ネルソン・マンデラ氏も1990年まで実に27年間も投獄され拷問に耐えている。その他アウンサンスーチー氏や、ダライ・ラマ14世など。その一方で、それを乗り越え泥臭くも輝かしい功績を残した人たちが世の中にはこんなにもたくさんいるんだという勇気を与えられた気がした。

平和賞の裏に見える意図と努力の軌跡

平和賞には選考委員会の平和への願いや意図が反映されることもある。特にパレスチナ問題では、その平和的解決に向けた期待から軍を率いる立場の人間に授与されることもあったし、1988年には国際連合平和維持軍に対して授与されたこともある。軍隊の受賞は後にも先にもこれが最初で最後。平和賞の受賞は必ずしも、すべての人から称賛されるものばかりでもなかったことも事実だ。ただ、こういったことはそれだけノーベル平和賞が世界に与える影響が強く、その意識の高さを表している。平和賞の選考自体が平和維持への願いが込められていて、その裏で見えない努力を積み重ねている人たちが必ずいるのだということを感じさせてくれもした。

人類の平和へ向けた誓い

日本の平和維持活動に対する貢献があまり目立たないのには少し残念な気がした。なにせ日本はそもそも非暴力と他国との共存により世界の紛争を解決し平和維持に尽力する名誉ある地位を占めたいという崇高な理念を掲げている。ノーベル平和賞の理念にもっとも近い国と言えなくもない。

世界にこれだけ殺戮兵器があふれ紛争が絶えない中、武力なしですべての紛争が解決できるというのは理想論なのかもしれない。ただ例えそうであったとしても、交渉により紛争を解決した事例や、多くの難民を救った事例(フリチョフ・ナンセン氏やナンセン国際難民事務所など)、戦争のみならずアイデアにより世界の貧困を救った事例(ムハマド・ユヌス氏とグラミン銀行)や、科学者の立場から世界の問題を問いかける試み(ジョセフ・ロートブラット氏とパグウォッシュ会議など)などいくらでもある。人物だけでなく、国ができることならもっとたくさんある、アルバ・ミュルダール氏などの推進により1968年にはスウェーデン政府は核兵器保有の意思を一方的に排除する核非武装宣言を行なっている。内戦の続く中米において小国コスタリカのオスカル・アリアス・サンチェス大統領の熱意により1987年には中米和平案合意が実現している。彼らはいずれもこういった国の決断に貢献したとして後にノーベル平和賞を受賞している。今は政府機関と切り離されているけれど、ノーベル平和賞の選定自体が平和維持活動の一つと言えるかもしれない。平和賞の威厳を保ち世界の良心を常にそこに向けることには相当の覚悟と努力があるに違いない。武力によって守られている平和があるのかもしれない、しかし平和への道はそれだけではないはずだ!平和への道だってもっともっと多種多様であっていいんだ。そんなことを改めて感じさせてくれた。





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Category: | Date:2013/01/20


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