秘花(瀬戸内寂聴)
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最近、JRの宣伝で佐渡やってますね?それで世阿弥が気になって、小説を読んでみました(単純!?^^;)そういえば、寂聴さんが世阿弥の小説書いてたよなーと。。。
秘花(ひか)
世阿弥は晩年、いわれのない罪で佐渡に島流しにあってしまうんですが、物語は晩年の世阿弥が己の全盛を回顧するところからはじまります。
時の将軍、足利義満と、同時代の学識髄一であった摂政の二条良基の2大パトロンに御ひいきにされ、世阿弥一家率いる観世座はまさに全盛期を迎えます。初めて将軍の前で猿楽を披露したのが世阿弥12歳。このとき将軍の目にとまり、以後芸能的にも性的にも寵愛されます。
最初は性表現が曖昧に留めてあったので思わず読み返しちゃったんですが。同性愛と公的な幼時売春みたいな描写がちらほら。。。いや、結構いっぱい?寂聴さんらしいといえばらしいのか!?な。オイオイほんとかよぉ。と気になって調べてみると室町から江戸初期にかけては、同性愛や美少年を愛でる習慣が普通にあったようですね?しらなかったぁ~~(常識ですか??)本書にも書いてあったけれども、もともとは僧院で、女人禁止のなか色欲を昇華させるために、男稚児などと関係を持つことはよくあったようです。世界的にもとりわけキリスト教・ユダヤ教の影響の少ない地域では同性愛も人間の自然の感情とされパートナーシップを認められていたようです。むしろ、物議をかもし出すようになったのは20世紀も後半になってからなんだって~。
ま、とにかく
このように、公家などに美男子を公に公開し斡旋する場としての役割も、当時の猿楽や田楽などにはあったのじゃないかと、いうことなのでしょうかね?そういった中で、世阿弥は将軍や時の学識人であったセレブに囲われもともと英才教育をされた天才がより雅な環境で芸術への造詣を深めていきます。演者としてはもちろん、作能についても才能を発揮した世阿弥は当時の公家など高い教養を持った有識人の趣向をふんだんに取り入れ、乞食の所業といわれた芸能を文学的な芸術にまで高めていったと言うことなんですね。
こういった古い文学芸能を知るとつくづく自分が何もしらないのだなーと思わずにはいられないのですが、本書にでてくる数々の和歌などなど。。。この和歌のセンスが絶妙だ!とか言われてもね。全然わかんないの。ほんともっと、古典とか勉強しとくんだったな。。。^^;せめて作詩できなくっていいからさ詩の音と意味が頭にスッとはいってくるくらいにはなりたかった。同じ日本語なんだし。。。なんか、日本の長い歴史の文学芸術の全てを知らずにドブに捨ててるような心持になる。。。
そんな男時(上り運気)の全盛を謳歌した世阿弥にも、女時(下り運気)がやってきます。義満の死、そして良基の死により、パトロンを失った世阿弥にたいする嫉妬や怨みの念が一気に噴出すんですね。先の将軍義満への反発もあったでしょう。あっという間に観世座は憂目にあいます。そんな中、追い討ちをかけるように実の息子であり跡継ぎであった元雅を失い。同時にいわれのない罪で、佐渡への流罪が決まります。愛する妻、椿の同伴もゆるされず、二度と京の地は踏めないだろうと絶望のうちに佐渡へと渡ります。このとき世阿弥、72歳。
人間の喜怒哀楽なんて相対的なもの。だから、自分の不幸と誰かの不幸を比べることほど無意味なことはない。でもね、やっぱりこういう運命の人を見てしまうと、どうしても自分と比べてしまいますよね?^^;こういう逆境のなか佐渡でも能に明け暮れ次第に自分を取り戻してく様をみていると、なんだか今の自分にもっと頑張れ!と背中を押されているかのような心持になります。
「ここが今や、日本有数の能の島だと言ったら、彼はどんな顔をするでしょうか」ねぇ~^^
(by JR東日本)
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Category:本 |
Date:2009/10/03