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人の脳はシングルタスク

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複数のタスク(作業)を同時並行しようとすると、パフォーマンスは著しく低下する。人の記憶には限界があり、一度に実行できる作業の量や時間にもまた限界がある。複数の人の話を同時に聞くことが非常に困難なのは、異なる作業を同時に実行するためにはこの限りある能力を大量に消費するためだ。人の脳はシングルタスク(=1度にひとつの作業しかこなせないこと)であり、マルチタスク化(=複数の作業を同時にこなすこと)しようとすると途端にできなくなる。同じような理由でチームが大所帯化するにあたり、ある時点からパフォーマンスの著しい低下が見られることがある。これも紐解くとボトルネックは、今までと同じことをしていても関わる人やモノが増えることでこなす作業の量や種類が増えることによるマルチタスク化が原因であることが多い。

こんな時、チームや個人のタスクの効率化を図るにあたって、いくつかおさえておきたいポイントをまとめた。

・タスクに優先順位をつけて順にこなす(シングルタスク化)
・タスクを細分化することでマルチタスクから細切れタスクに
・ルール化して記憶に頼らないルーチンを作る


1.タスクに優先順位をつけて順にこなす(シングルタスク化)

例えば、チームに頼みたい2つの仕事があったとして、これを2つ同時に依頼するよりも、ひとつづつ完了を見届けてから依頼するほうが格段に納期が早くなる、という話。これはほとんどの場合「優先順位」を意識するクセをつけるだけで解決する。けど、意外にもこれができない人が多い。。。どのみち納期は早くなるのだから、何でもかんでも、すぐこれもこれもってなる衝動を抑える「忍耐」を持つだけでもチームのパフォーマンスはアップすると覚えておこう。目先のタスクが終わるのを待ってから指示。それだけでも効果があるはず。人から同時に話しかけられたらどうなるか?−−−結局はじめから話し直すことになる。同時に進行するよりも鼻から別々に作業をするほうが効率的なのだ。これは個人でもチームでも同じことが起こる。

ちなみに参考になるかわからないけど、僕のチームではわざわざ上司が介入せずともある程度の仕分けができるよう「スプリント」タスクと「飛び込み」タスクを単純分類している。スプリントタスクとは、集中して継続処理する必要のある仕事のこと。例えば、資料作成だったり、特定の顧客との交渉だったり。一方、飛び込みタスクというのは、瞬間的に割り込んでくる仕事のこと。例えば、電話受けだったり、突然の他部署からの雑務処理だったり。

それをこなすチーム自体をそれぞれに分けている。「飛び込み」チームには待機してもらっていて(何も無ければお菓子でも食べててもらっている)「スプリント」チームが集中できる時間をできるだけ確保する。一見、「飛び込み」チームは常に遊んでいるようにも見えるがチーム全体でみると作業効率は飛躍的にアップする。

計画的にチームのメンバーを入れ替えると「飛び込み」の暇時間に「スプリント」の下準備をするようになったり、シングルタスクを意識しながら時間を有効に使う文化も育つようになる。優先順位をつけるのが難しければ、こういった作業分類のオートメーション化もシングルタスク化を援助するひとつの手段だと思う。


2. タスクを細分化することでマルチタスクから細切れタスクに

とはいえ、仕事って他人との協業なので、シングルタスクを基本とするチームの文化が育っていない限り、ひとつのタスクが終わるまで次に手を付けない状況を自分の都合だけで構築することは極めて難しい。

念を押すけど、シングルタスク化を無視してパフォーマンスを上げる手段はない、と思ったほうが良い。

ので、2つめの対策としてタスクを細分化する能力を身につけよう。本来であれば、1日かかる仕事は集中して1日かけて仕上げてから次のタスクに移ることのが最も簡単で速い。これが分断されるから仕事のパフォーマンスが低下してしまう。このことから、極力この分断を避けるために、仕事を予め細分化する能力を身につけよう。例えば、7時間かかるタスクを仮に7分割できたとしたら、ひとつのタスクはおよそ1時間でおさまる。3時間かかるタスクが途中でもうひとつ振ってきたらこれも細分化する。1時間のタスクが10個できるので、シングルタスクを意識しながら細分化された1タスクに集中して完了をもって次に進むようにする。これを「細切れタスク化」と呼んでいる。

細切れタスク化ができるようになると、シングルタスクの原則に基づきつつ飛び込みで雑務が入った場合は、その合間にこなせるようになる。細切れタスク単位でうまく切り替えることで、2つのタスクを見かけ上並行して進行させることもできるようになる。不幸なことに仕事が分断されても影響するのはその1時間の1コマだけになるため極端なパフォーマンス低下を回避することにもつながる。

難しいのは、ひとつのタスクを「細切れタスク」に分解すること。細切れ化したのにパフォーマンスがあがらない、と悩んでる場合、タスクが完全に分離しきれていない可能性が高い。

タスクをただ順番にステップ実行しているだけだとこれまでのやり方と変わらない。重要なのは、細切れタスクが完了した時点で、そのタスクのことを忘却できること。今日作業をして、仮に半年後の忘れたころに次のステップをやっても続きができるか?という観点をもってみてほしい。今日のステップのことを覚えてないと次のステップがこなせない、というのであればそのタスクは分離できていない。

タスク分離とは、つまりいつでもどこからでも継続可能かどうかということにある。今日のタスクが次に引き継げるか?それには色々テクニックがある。例えば、資料作成を細切れタスク化するような場合、今日は資料の全体構成だけ作って詳細は次のタスクで実施することとしたとする。この時、作業終了時に作業記録をコメントで残しておくなどすれば次回、続きを作成する際に、そのコメントを読めばどこまでの作業が完了していて、何が積み残しなのかがわかるようになる。

未来の自分は他人だと思うようにして他人に対して作業引き継ぎをする気持ちでコメントを残す。それを読めば次回同じクオリティーで作業継続が可能になる。めんどくさいと思うかもしれないが、たった3分の作業を惜しむと未来の自分の1時間がムダに奪われることになる。

また、これは僕の先輩がやっていた簡単で効果的な方法だけど、資料中にあえて「気持ち悪い形跡」を残す。例えば、Excelであれば未完了の部分にどぎつい黄色の背景色をつけておく。テキストであれば、未完成部分に●●●という文字を入れておく。自分の美的センスに反する「異物」を仕込んでおく。すると次回作業再開時に、違和感とともに未完成部分が気になり漏れなくタスクを完了できる。全体が終わらせないと埋められない項目というのは必ずある。ただ、それを待っていちいち作業をしていると結局全てのタスクを1度で終わらせないといけない無限ループに陥ってしまう。今わからないものは、わからない、と当たりをつけて「異物」を残しつつどんどん先へ進もう。このクセを付けておくだけで残タスクのメモは書かなくてよくなる。

細切れ化をするためには引き継ぎメモや、こういった仕込みが必要になるので、作業自体は手数が多くなる。一見効率が悪化するように感じるかもしれないが、これができるのとできないのとでは複雑化した環境下で余裕をもって生き抜くには必須だと思う。

自分なりのルールを積み重ねていけば、タスクの分離はさしてめんどくさいことではない。常にシングルタスクという原則は徹底するよう意識し、タスクを細切れにして日々の怪奇な依頼を粛々とこなしていこう。

次に、そのための要点をもう少し説明する。



3.ルールを守るルール

ルールを運用することは正直めんどい。そこだけを見ると、パフォーマンスは低下するようにすらみえる。みえるどころか、中途半端に運用すると返って効率が下がってしまうことは充分ありえる。だからこそ最も大事なのは作ったルールを必ず守ること。

ルールを決めることで、人の記憶などの曖昧な要因に左右されなくなり、ルールが論理的な意味を持つものであればあるほど、後続の作業での出戻りも解消される。だからこそルールが半端に守られないことは運用の破綻を意味する。例えば、押印前の契約書は全て「未契約BOX」に入れること、というルールを作ったとする。これにより押印前の契約書の扱いは何も考えずに「未契約BOX」に運べばよくなる。押印者もわざわざ契約書を集めずども、未契約BOX「だけ」をチェックすればよくなる。加えて、これが徹底されているかいないかで状況は変わる。これは同時に、未契約BOXが空であれば、押印前の契約書は「他にない」ということでもある。ところが、このルールが徹底されている確信がない場合、「他にない」ことを確約するためには契約書が保管されていそうな場所を「全て」探し直さないといけなくなる。押印前の契約書が他になければ今日は帰っていいぞ、と言われた時に、チーム全員が「未契約BOX」を一瞥するだけで即座に帰り支度ができるだろうか?

ルールが守れない = その都度「全確認」が必要になる。

このことがわかっていないメンバーが多い。ルールの徹底は個人のタスクにも当てはまる。タスクの細分化や効率化を図るにはルール化が必要。更にもっと重要なのはそのルールを徹底して守る意志である。



4. 記憶に頼らない

管理には自分の脳や記憶を極力使わないようにしよう。新人教育の際に、上司に呼ばれた時はかならずメモと鉛筆を用意しろ!とか言われたけど、あれは間違っていないと思う。この程度のことメモらなくても、と言う人ほど、自分がタスクを撃ち漏らしていることにすら気づかない。人間の記憶なんて曖昧で、次の日になったら半分以上のことは忘れている。

できるだけ、パソコンに覚えさせるのがベスト。紙でもいい。最も単純なのは、まずはタスクを書き出してできたものから消しこんでいく。これだけでもOK。とにかくやらなきゃいけないことを書き漏らさないことが重要。そして自分で覚えようとしない。パソコンに覚えもらって楽をしよう。



5. 組み合わせて実践してみよう(ルーチン化)

タスクを一連の作業として覚えることを諦めて、自分自身のルールをどんどん積み上げていこう。僕はほとんどのタスクを覚えないようにしている。ただ次回同じことをやった時に、同じように実施できるように痕跡を残している。何かの作業した場合、簡単にでもその手順を記録として残すようにしている。画面のキャプチャでもいい。例えば、Excelなんかで複雑な関数使ってレポートを作って手順を覚えたつもりでも、翌月に同じレポートが必要になったら出し方がわからなくなった。。。なんてことはしょっちゅうある。こういうのは覚えようとするよりも、こういうレポートをこういう手順で作ったという記録だけ残して後は忘れていい。そのルールを決めていて、次回実施する時にそれがわかるような工夫をしている。

他にも、メールをチェックした際に「対応不要/完了」と「要対応」に振り分けるルールをつくるだけでも効率は変わる。僕の受信トレイの中身はだいたい5〜10通くらいの要対応メールが残っているだけで対応不要/完了のものは何も考えずにアーカイブに突っ込んでいる。これをするだけで、ToDoリストなんてつけなくともメールの受信トレイを開くだけで、残タスクリストができあがっている。受信トレイに何千通もの未読メールが残っている人をよく見かけるけど、せっかく向こうからタスクを文面化してくれてるのに、それを管理しないなんて、もったいない。。。

他にもデスクトップに残すファイルは作業中のもの、と決めている。そうするとデスクトップを開くだけで、アイコンの数が残タスクになっている。作業中以外のファイルについて、消す・消さないの判断を記憶に頼りたくないので、一日の業務終了時にファイル名の先頭に日付をつけて、書庫フォルダーに無条件に突っ込んでおく。後から必要になったら、該当する日にあたりをつければファイルはすぐに見つかる。最近はファイル検索のしくみも高度化してきたので、ファイル作成時にわかりやすい名前を必ずつける、というルールを徹底するだけでもよい。なるべく自分の脳や記憶に頼らないタスク環境をつくろう。そしてそれを徹底して守る。

ほとんどの雑務は自分で考えなくてよくなる。考えなくても仕事が細分化され、ルールに沿ってタスクをこなせば複数のタスクにもパフォーマンスを極端に落とさず対応ができるようになるはず。

一昔前と今は時代が大きく異なっている。一度に動いているプロジェクトの数もスピードも増大し、覚えないと行けない仕事は山積し、技術革新の名のもとに常に新しいテクノロジーが押し寄せてくる。仕事の属人化には常にリスクが伴い、記憶や個人技に頼る運用ではミス漏れが多発する。人の瞬発的な能力だけで完結できる許容を既に大きくオーバーしている。

覚えられないことが悪なのではなく、覚えようとすることもさせることも無謀なのだと理解しよう。脳の使い所をよりクリエイティブなタスクに集中し使えるよう意識しよう。




Photo by JD Hancock on Foter.com / CC BY


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Category: | Date:2018/05/12


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