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ゼロ・エミッション(1)(グンター・パウリ)

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そろそろ、グンター・パウリについて忘れないうちに、ブログに記録しておきますっ。最近物忘れが・・・。彼の考えるゼロ・エミッションとそれによる嬉々とした未来の姿が少しでも伝われば・・・よいのですが。ゼロ・エミッションとは地球上で生まれる全てのゴミを0にするのではなく、そもそもゴミ・廃棄物という概念をなくそうというもの。自然界を見習い、1つの産業の廃棄物が別の産業の資源となるような相互依存の産業を発展させ循環型の社会を作りましょうといった構想です。このゼロ・エミッションについてもう少し詳しく書きたいと思います。新しい社会の風を少しでも感じ取ってもらえるかしら。。。

人間は廃棄物を生み出す唯一の生物

ゼロ・エミッションを考える前に、今地球上にはどのような問題があるのでしょう。まず、一番にあげられるのが前回のブログでも触れた環境問題です(記事)。地球にはあらゆる循環システムが存在しています。1つの生物の廃物は、別の生物の養分となり互いに共生しあっている。このため宇宙空間にぽっかり浮かんだこの閉じた環境でも、地球上に廃物は溜まっていかない。僕たち人間は他に利用価値がない廃棄物を生産できる地球上の唯一の動物なのです。廃棄物と汚染の蓄積はときとして有害でこれを積み重ねることにより、地球はゆるやかな自滅の道をたどっている。廃棄物だけではなく、次に考えなくてはいけないのは地球の資源についての問題です。これは石油など化石燃料のエネルギー資源だけでなく、商品に使用されている鉱物資源や、その他地球上で生産される食料などの生物資源も含まれます。今、これらの資源の多くが無駄に消費され地上に住んでいる人間をもはや養いきれない状態に陥っている。

食糧について考えてみる

食料について詳しく見て行くことにします。今、地球上には約65億の人間が住んでいるといわれている。そのなかで、現在でも約8億人の人々はごく基本的なサービスさえ受けられずにいる。加えて、毎年8,000万人~9,000万人が地球人口に加わろうとしている。この人口増加に対応するためだけでも、地球は年間にして2,800万t.の穀物を増産する必要がある。考慮しなければならないのは、人口の増加だけではありません。生活の向上による嗜好品としての食料の増加も加味しないといけない。今後、20年の間にアジアだけでも4億人の中流階級の消費者が現れると予想されています。今後、こうした国々での鶏肉、牛肉、その他嗜好品としての食料の消費がまずます増大するでしょう。こうした状況が更に人間の食料を生産するためだけの非効率な食物連鎖を推し進めることになる。あまり気にしたことありませんでしたが、僕たち裕福な国では普段何気なく食している鶏肉。この1kgの鶏肉を生産するのにはその倍の2.2kgの穀物が必要なんです。また、1kgの牛肉を生産するのには7kgの穀草が必要になります。この資源不足の状況を考えると非常にエネルギー変換効率が悪く、贅沢な食材ということになります。

これを見てもわかるように、地球上の限られたスペースの中で、僕らは今後もっと劇的に生産量を増やさなくてはいけない。加えて、今ある資源のなかで今後増大する中流階級に見合った更に多くのサービスや製品を提供していかなくてはなりません。しかし、台頭する中国やインドのデータを見ると、もはや現状の限られた資源の中だけでこれらの帳尻を合わせるのは難しいと言わざるを得ない。例えば中国人が平均して1日に1本のビールを消費するだけで大麦の世界市場を買い占める量に匹敵する。中国人ののどの渇きをビールで癒すのに、それだけで世界の大麦の全収穫量が必要になるのである。仮に、もう少し現実的に、全中国人が1週間に今よりもう1本多くビールを飲むようになるだけで大麦の価格は2倍になると予想されている。中国ではすでに1本のビールに3ドルまで支払えるだけの中流階級が3億人いる。この限りある原料をめぐって世界の裕福な中流階級が争奪を繰り広げることは避けられない。

問題の根本をみずに科学に頼り続けられるのか

こういった状況にこれまで科学が大きく貢献してきた。化学肥料の改善や、灌漑、農薬の使用などの努力を続けてきた。世界の穀物収穫高は過去40年間で既に6億t.から18億t.の3倍に増え。牛肉の生産高もほぼ3倍。漁獲高は4倍以上に増えた。これらは、科学者の努力の賜物だといえるでしょう。しかし、この飛躍的な増産が今後も同じように続くのか、と問われると誰も首を縦にふれないのが現状でしょう。。。化学肥料は使用量を増やした分だけ生産量は増大するが、その量にも限界がある。既にその使用量の最大値に達している国は数多い。こういった中、遺伝子工学やバイオテクノロジーなどが注目されており、害虫に強い品種や環境に強い品種を作ることで1割から2割の増産を実現している好例もある。しかし、これでは物足りない。これから人口は爆発的に増え、裕福な生活に期待をよせる中流階級を養うには2割程度の増産ではまかなえないことは目に見えている。これまで以上の増産率を維持できると言える技術はまだないし、恐らく常にこの驚異的な増産をキープし続けるのは無理でしょう。特に遺伝子操作による品種改良は、その他の面でも疑問が残る。食品としての安全性ばかりに目を向けがちですが、むしろ長期的な観点でその作物が育っている自然環境を見るとき、生態系そのものにどのような影響をもたらすのかがまったくわからない。より深刻な環境問題を引き起こさないとはいいきれない。

こういった状況のなかでは、新たな変化が必要になる。これまでのように、食料が必要だから増産する。汚染がひどいから規制をして汚物を削減する。というように、僕らはこれまで1つの「部位」に対して直接的な解決策とな結果を求めてきた。しかし、もはや問題は1つのパーツ単位では解決できない。パーツとパーツとの間にひずみが生まれ、「全体」としての解決につながらないのでは意味がない。今や、このパーツ同士を結び、より入り組んだ「全体」としての複合的な問題を解決する革新的なアイディアが必要とされている。

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Category: | Date:2006/09/30


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